弁護士・弁理士 稲井 要介
東京弁護士会、日本弁理士会
この記事の執筆者:弁護士・弁理士 稲井 要介
東京都出身。東京工業大学大学院修士課程修了。大手素材メーカーにて製造・開発・知財業務に携わり、並行して弁理士、弁護士資格を取得。2025年8月に稲井法律特許事務所を開設。知的財産、企業法務などの業務に従事している。
2026年1月1日から取適法(改正下請法)が施行されます。
目次
主な改正事項
規制の見直し
- ①運送委託の対象取引への追加(物流問題への対応)
- ②従業員基準の規模要件への追加(下請法逃れ等への対応)
- ③手形払等の禁止 → 支払遅延に該当
- ④協議に応じない一方的な代金決定の禁止(価格据え置き取引への対応)
- ⑤面的執行の強化
「下請」等の用語の見直し
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通称:下請法
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略称:中小受託取引適正化法
通称:取適法 |
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親事業者
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委託事業者
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下請事業者
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中小受託事業者
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下請代金
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製造委託等代金
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本コラムでは、取適法の対象取引(上記①・②が関連)について解説します。
対象取引であるか否かは、➊取引の内容、及び➋規模要件によって判断されます。
➊取引の内容
取適法では、従来の取引内容に加え、新たに特定運送委託が追加されました。
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製造委託
(類型1~4) |
物品を販売し、または物品の製造を請け負っている事業者が、規格、品質、形状、デザインなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託すること
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|---|---|
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修理委託
(類型1、2) |
物品の修理を請け負っている事業者が、その修理を他の事業者に委託したり、自社で使用する物品を自社で修理している場合に、その修理の一部を他の事業者に委託すること
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情報成果物作成委託
(類型1~3) |
ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなどの情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託すること
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役務提供委託
(1類型のみ) |
他者に対して運送やビルメンテナンスなどの各種サービス(役務)を提供する事業者が、提供する役務の全部又は一部を他の事業者に委託すること
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特定運送委託
(類型1~4) |
事業者が、販売する物品、製造を請け負った物品、修理を請け負った物品又は作成を請け負った情報成果物が記載されるなどした物品について、その「取引の相手方」に対して運送する場合に、その運送の行為を他の事業者に委託すること
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特定運送委託(類型1~4)





➋規模要件
取適法では、従来の資本金基準に加え、新たに従業員基準が追加されました。
以下に示すように、取引の内容によって、規模要件が異なります。
製造委託、修理委託、情報成果物作成委託(プログラム)、役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)、特定運送委託
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委託事業者
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中小受託事業者(個人含む)
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|---|---|---|
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A
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資本金3億円超
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資本金3億円以下
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B
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資本金1千万円超3億円以下
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資本金1千万円以下
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C
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常時使用する従業員300人超
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常時使用する従業員300人以下
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A~Cのいずれかに該当すれば、規模要件を満たします。
情報成果物作成委託(プログラム除く)、役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理除く)
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委託事業者
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中小受託事業者(個人含む)
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|---|---|---|
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a
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資本金5千万円超
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資本金5千万円以下
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b
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資本金1千万円超5千万円以下
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資本金1千万円以下
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c
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常時使用する従業員100人超
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常時使用する従業員100人以下
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a~cのいずれかに該当すれば、規模要件を満たします。
従業員基準(C, c)は資本金基準(A, B, a, b)が適用されない場合に適用します。


